2026.06.29
2025.05.29
韓国コスメは日本の輸入化粧品市場で存在感を高め、ドラッグストアの棚からバラエティショップ、ECまで幅広い売場に並ぶようになりました。ただし日本での成功は、韓国国内で通用した売り方をそのまま延長した結果として得られるものではありません。日本の生活者は成分や使用実感を自分で確かめてから購入する傾向が強く、広告や発信の表現には薬機法、景品表示法、ステルスマーケティング規制という複数のルールが重なります。さらに流通は業態ごとに商談の前提や検討時期が異なり、PRの打ち手を決める前に押さえておくべき条件がいくつも並びます。本記事では、韓国コスメブランドが日本でPRを設計するための前提として、韓国市場との構造差、生活者の評価軸、法規制の全体像、輸入販売と表示のルール、チャネル構造、商習慣の時間軸を順に整理します。個別施策の実行手順ではなく、全体設計の土台をつくるための地図として使ってください。
目次
日本での韓国コスメのPRは、認知を取るための手段を選ぶ作業から始まりがちです。ところが実際に成果の差を生むのは、その手前にある前提の整理です。日本市場は輸入化粧品の競争が激しく、韓国ブランドは日本ブランドだけでなく同じ韓国ブランド同士でも比較されます。加えて広告表現の制約、流通ごとの商談条件、生活者の情報接触の癖が絡み合うため、同じ施策でも成立する場合と空振りする場合が分かれます。前提を先に固めておくと、どのチャネルで誰に何を語るのか、どの表現を避けるのか、どの順番で露出を積むのかが自然に絞られていきます。逆に前提が曖昧なままだと、露出は取れているのに購入や再購入につながらない状態が長く続きます。ここでは韓国と日本の競争環境の違いと、前提を飛ばして施策から入った場合に起きやすい停滞を確認します。
韓国国内の化粧品市場は開発サイクルが速く、話題性のある新製品を短い間隔で投入しながら支持を取りにいく動き方が定着しています。トレンドの立ち上がりも収束も早いため、瞬間的な話題量が売上に直結しやすい構造です。日本市場はこの前提が変わります。新製品への関心は高い一方で、実際の購入判断では肌への合い方や継続して使えるかどうかが重く見られ、話題になった時点から購入までに時間差が生じます。また流通が細かく分かれているため、話題が立っても手に取れる場所がなければ機会を逃します。韓国での成功要因をそのまま持ち込むと、話題づくりだけが先行して受け皿が足りないという形になりやすいのが実情です。日本でPRを設計する際は、話題の総量ではなく、関心を持った人が確かめて購入に至るまでの経路が用意されているかを起点に考える必要があります。
| 論点 | 韓国市場で前提になりやすいこと | 日本市場で前提になること |
|---|---|---|
| 製品投入 | 短い間隔での新製品投入と話題の更新 | 投入後も使用実感の蓄積で評価が固まる |
| 購入判断 | トレンドへの反応が購入に直結しやすい | 成分・安全性・肌への合い方を確かめてから判断 |
| 表現の制約 | 現地の広告基準に沿った訴求 | 薬機法の効能効果の範囲内に限定される |
| 流通 | 自社チャネルとオンラインの比重が高い | 業態ごとに棚割り時期と商談条件が異なる |
| 情報の受け取り方 | 発信量とスピードが影響しやすい | 複数の口コミを照合して信頼性を測る |
前提の整理を省いたまま施策に着手した場合、つまずき方には一定のパターンがあります。ひとつは表現の差し戻しです。韓国で使っていた訴求をそのまま日本語にすると、薬機法で認められる範囲を超える言い方が混ざり、媒体側の審査や流通側のチェックで修正が入ります。制作物を作り直す時間が積み上がり、上市時期に間に合わなくなることも珍しくありません。もうひとつは受け皿の不足です。発信で関心が生まれても、購入できる場所が限られていれば熱量は流れていきます。さらに、社内の意思決定に必要な資料が揃っていないために流通側の商談が進まず、露出の時期と販売開始の時期がずれるケースもあります。これらはいずれも施策の質の問題ではなく、前提条件の確認漏れから生じます。着手前に規制、許認可、流通、生活者の評価軸を並べて点検しておけば、多くは避けられます。
日本でPRを設計するうえで最初に理解しておきたいのが、生活者が化粧品をどう評価しているかという点です。韓国コスメへの関心は幅広い層に広がり、特に若い世代では使用経験が高い水準にあると報告されています。支持の理由として挙げられるのは、発色やカバー力といった機能面の実感、パッケージを含むデザイン性、そしてSNSで目にする機会の多さです。ただし関心の入口がSNSであっても、購入の決め手はそこで完結しません。日本の生活者は、成分表示を見比べ、自分と肌質の近い人のレビューを探し、価格に対して納得できるかを検討してから購入します。PRの役割は、この検証の過程で必要になる情報を先に用意し、迷いが生まれる場所を減らすことにあります。ここでは購入前の行動と、口コミが果たしている機能を分けて整理します。
日本の生活者が化粧品を選ぶ際、効果への期待と同じくらい重く見ているのが、自分の肌に合うかどうかという不安の解消です。輸入品の場合はこの傾向がさらに強く出ます。使われている成分が分かるか、刺激が出た報告がないか、どのような肌質の人が使って良い評価をしているかといった点が確認されます。テクスチャーや香り、色の出方は文章だけでは伝わりにくいため、店頭で試せる機会や、実際に使った様子が分かる映像の存在が判断を助けます。PRの設計では、ブランドの世界観を伝える発信と並行して、この確認欲求に応える情報を配置しておくことが有効です。具体的には、全成分の掲示、使い方や使用量の説明、肌質や色番の選び方の案内などが該当します。派手さはありませんが、購入前の最後の迷いを取り除く役割を担う情報であり、揃っていないと関心が購入に変わりません。
韓国コスメの情報は、ブランドの公式発信よりも先に第三者の投稿として届くことが多くなっています。日本の生活者はその投稿を出発点にしつつ、ひとつの評価を信じ切ることはしません。複数の投稿を横に並べ、評価が一致しているか、誰が言っているのか、宣伝なのかを見極めながら判断します。つまり口コミは認知の手段であると同時に、購入前の検証装置として働いています。この構造を踏まえると、発信量を増やすだけの施策は効きにくくなります。求められるのは、異なる立場の人が語っても内容が矛盾しない状態をつくることです。製品の特徴や使い方の説明を統一し、広告であることを明示すべき投稿では表示を徹底し、購入者が自発的に書いたレビューが積み上がる導線を用意する。この三つが揃うと、生活者が照合したときに信頼できる情報として残ります。
日本で化粧品のPRを行う際、表現の自由度を最も強く規定するのが法規制です。関係する法令は複数あり、それぞれ守るべき論点が違います。薬機法は化粧品として標榜できる効能効果の範囲を定め、範囲を超える表現を誇大広告として扱います。景品表示法は、実際よりも良く見せる表示や取引条件を有利に見せる表示を禁じます。さらに2023年10月からは、広告であることを隠して第三者の感想のように見せる発信がステルスマーケティングとして規制の対象になりました。これらは重なって適用されるため、ひとつの投稿が複数の観点から問題になることもあります。制作の最終段階で確認する運用にすると差し戻しが増えるため、企画の段階で判断基準を共有しておくことが実務上の前提になります。ここでは三つの規制の要点を順に整理します。
| 規制 | 規制している内容 | PRで確認する観点 |
|---|---|---|
| 薬機法 | 化粧品として標榜できる効能効果の範囲を限定し、範囲を超える表現を誇大広告として禁止 | 訴求文言が効能効果56項目の範囲に収まっているか。医薬品のような作用を示していないか |
| 景品表示法 | 実際より優れていると誤認させる表示(優良誤認)と、取引条件を有利に見せる表示(有利誤認)を禁止 | 最大級の表現に客観的な根拠と出典があるか。価格や特典の条件が正確か |
| ステルスマーケティング規制 | 事業者の広告であることを隠し、第三者の自主的な発信のように見せる表示を禁止(2023年10月施行) | 広告であることが分かる表示があるか。依頼条件と表記ルールを文書で共有しているか |
化粧品の広告で標榜できる効能効果は、厚生労働省が示す56項目の範囲に限られます。皮膚にうるおいを与える、皮膚をすこやかに保つ、肌荒れを防ぐ、毛髪にハリとコシを与えるといった、穏やかに整えることを示す表現が該当します。一方で、肌の生まれ変わりを促す、代謝を高めるといった体の働きそのものに影響を与える言い方は範囲を超え、医薬品的な効能の標榜として扱われます。重要なのは、社内に試験データがあっても56項目の外に出る表現は使えないという点です。研究結果を伝えたい場合は、あくまで範囲内の言葉に置き換える必要があります。韓国語や英語の原文を直訳すると範囲を超える表現が混ざりやすいため、日本語化の段階で確認する工程を設けることが現実的な対策になります。ビフォーアフターの見せ方や体験談の書き方も同じ観点で判断が必要です。
景品表示法が問題にするのは、表示が実際の内容や取引条件から離れて良く見えてしまう状態です。品質や性能を実際より優れていると誤認させる表示は優良誤認、価格や特典などの取引条件を実際より有利に見せる表示は有利誤認として扱われます。化粧品のPRで注意が必要になりやすいのは、売上や満足度に関する順位や最大級の言い方です。この種の表現を使う場合は、調査を行った機関、調査の時期、対象範囲を明示できる客観的な根拠が必要になります。根拠を示せないまま業界で最も優れているといった表現を使うと、違反と判断されるリスクが生じます。キャンペーンの価格表示や数量限定の条件も同様で、条件の一部を小さく書いて実態と異なる印象を与える構成は避けるべきです。制作物ごとに根拠資料を紐づけて管理する運用にしておくと、確認の手戻りを減らせます。
2023年10月に施行された規制により、事業者の広告であるにもかかわらず、第三者が自主的に発信したように見せる表示は景品表示法上の不当表示として扱われるようになりました。対価の支払いだけでなく、製品の無償提供や投稿内容への関与があれば広告に該当し得るため、ギフティングやモニター施策も対象として検討する必要があります。実務上とくに押さえておきたいのは、表示の義務を負うのが発信した個人ではなく広告主である事業者側という点です。したがってブランド側が、依頼の条件、広告であることを示す表記の方法、掲載位置までを定めて共有し、投稿後に確認できる体制を持つことが求められます。韓国本社が海外向けに実施している施策を日本でそのまま展開すると表記の運用が抜け落ちやすいため、日本市場向けの依頼書式を用意しておくと安全です。KOLを起用した施策の実務は、韓国コスメにおけるKOLマーケティング戦略で詳しく整理しています。
PRの前提として見落とされやすいのが、日本で化粧品を販売するための許認可と表示のルールです。これらは法務や物流の担当領域と受け取られがちですが、実際にはPRの設計に直接影響します。販売名義をどこが持つかによって、発表資料に載せる企業名や問い合わせ窓口が変わります。表示ラベルの内容が確定しないと、製品名や成分の書き方を対外的に出せません。上市日が許認可の進行に左右されるため、発表の時期も連動します。つまり許認可と表示は、PRのスケジュールと文言を決める起点です。ここを早い段階で確認しておくと、告知の準備と製品の準備が同じ時間軸で進みます。逆に後追いになると、発表直前に表記の修正が発生し、資料や制作物の作り直しが連鎖します。ここでは必要な許可と届出、そして表示のルールを整理します。
海外で製造された化粧品を自社で輸入し、自社製品として国内に出荷する場合は、化粧品製造販売業許可と化粧品製造業許可の両方が必要になります。製造業許可には区分があり、輸入した製品の包装、表示、保管を行う場合は該当する区分の許可を取得します。製造販売業許可では、品質管理と安全管理を統括する総括製造販売責任者を置くことが条件で、この責任者には薬剤師、または薬学もしくは化学に関する専門課程を修めた人という要件が定められています。あわせて、外国の製造販売業者や製造業者に関する届出を医薬品医療機器総合機構へ提出し、製造販売届書を所管の都道府県に提出します。自社で許可を取得せず、国内の輸入販売会社に販売名義を委ねる形も選択できます。どちらを選ぶかで発表主体と対外的な窓口が変わるため、PRの体制設計より前に決めておく必要があります。
日本国内で販売する化粧品は、直接の容器や包装に定められた情報を表示する必要があります。製造販売業者の名称、製品の名称、製造番号などに加え、配合されている成分は原則として全成分を表示します。この表示内容は、購入前に成分を確認する生活者の行動と直結しています。成分名の日本語表記が不統一だと、ブランドサイト、店頭、ECの商品ページで書き方が食い違い、確認しようとした人に不安を与えます。PR側の実務としては、表示ラベルの内容が固まった段階で、対外的に使う成分名や製品名の表記を一覧として整えておくことが有効です。プレス資料、ブランドサイト、販売店向けの説明資料、投稿依頼時の説明文まで同じ表記に揃えておけば、第三者が発信した内容と公式情報の照合が容易になり、信頼を損なう齟齬が起きにくくなります。
日本の化粧品流通は業態ごとに役割が分かれており、韓国コスメの購入経路も一様ではありません。従来からあるドラッグストアや百貨店に加えて、バラエティショップとECの比重が高まってきました。韓国コスメについては購入経路としてECの存在感が大きく、若い層を中心に定着していると報告されています。またカテゴリによる違いもあり、スキンケアはECの構成比が大きい一方で、ベースメイクはドラッグストア、ポイントメイクはバラエティショップやコンビニエンスストアの比重が相対的に大きいという傾向が示されています。PRの設計では、この構造を踏まえて役割を分けることが重要です。どのチャネルで最初の実績をつくり、どのチャネルへ広げる段階で何を証明する必要があるのかを決めると、発信の順番と内容が定まります。
| チャネル | 特性 | PRで担う役割 |
|---|---|---|
| EC(総合モール・自社サイト) | 少ない初期在庫で開始しやすく、レビューが蓄積される | 初期の反応取得とレビュー基盤づくり |
| バラエティショップ | トレンド性の高い商品が並び、若年層の来店が多い | 話題性の裏づけと店頭で試せる機会の提供 |
| ドラッグストア | 来店頻度が高く、日常的な購入の受け皿になる | 継続購入につながる認知の面での広がり |
| 百貨店 | 接客を通じた提案と体験の場になる | ブランドの世界観と品質の伝達 |
| 公式D2C | ブランド側で情報とデータを持てる | 正確な製品情報の提示と顧客との関係構築 |
韓国コスメの日本での立ち上がりは、ECを起点にした流れが定着しています。総合モールでの取り扱いが広がり、購入経路の中でECが占める比重は大きく、とくに若い層の購入では主要な経路になっていると報告されています。ブランド側にとってECは、比較的少ない在庫で販売を開始でき、反応を数字で確認しながら次の判断ができる場です。PRの観点で重要なのは、ここでレビューが積み上がることです。購入者が書いた評価は、後から関心を持った人の検証材料になり、実店舗との商談でも実績として説明できる材料になります。したがって立ち上げ期の発信は、単発の話題づくりよりも、実際に購入して使った人の声が残る設計を優先する価値があります。商品ページに載せる情報の粒度、色番や肌質の選び方の案内、使用量の説明までPR側で整えておくと、レビューの内容も具体的になります。
実店舗への展開は、ブランド側の希望する時期だけで決まりません。小売各社には棚割りを検討する時期があり、その検討に間に合う形で情報を出す必要があります。商談で見られるのは、商品の魅力に加えて、どの程度の需要が見込めるのかという裏づけです。ECでの販売実績、SNSでの反応、メディア掲載の状況などが説明材料になります。さらに、供給体制、価格設定、販促の計画、表示の適法性といった点も確認されます。PRの役割は、この商談の前段で使える材料を用意しておくことです。掲載実績をまとめた資料、購入者の評価の傾向、体験機会の実施計画などが揃っていると、商談で説明しやすくなります。逆に露出だけが先に走り、実績が言語化されていないと、話題になっているという印象論だけで交渉に臨むことになり、棚の獲得につながりにくくなります。
百貨店と公式D2Cは、販売量を積む場というより、ブランドの理解を深める場として機能します。百貨店では接客を通じて肌質や悩みに応じた提案ができ、テクスチャーや香りを確かめてもらう体験が成立します。価格帯の高い製品や、使い方の説明が必要な製品では、この接点があるかどうかで評価が変わります。公式D2Cは、ブランド自身が情報の出し方を管理できる点に価値があります。全成分や使い方の説明を過不足なく載せられ、購入者との継続的な関係を築く土台にもなります。PRの設計では、この二つを情報の基準点として扱うのが現実的です。第三者の発信や小売各社の販促で語られる内容が公式の情報と食い違わないよう、説明の元になる資料を集約しておく。そうすることで、生活者が複数の場所で情報を照合したときに一貫した印象が残ります。
日本市場で計画どおりにPRを進めるには、商習慣として定着している進め方と時間の使い方を理解しておく必要があります。小売各社やメディアとのやり取りでは、その場での合意よりも、社内で内容を確認して持ち帰る進行が一般的です。判断の材料が書面として揃っているかどうかが、進行の速さを左右します。またメディア側には編集や制作のサイクルがあり、掲載を狙う時期から逆算して情報を渡す必要があります。この二つを把握しないまま短い準備期間で動くと、発表の時期と流通の準備、掲載の時期が噛み合わなくなります。韓国本社の判断速度を前提にしたスケジュールでは間に合わないことも多く、日本側の時間軸を踏まえた計画に組み替える作業が必要です。ここでは意思決定と情報提供の二つの側面を整理します。
日本の企業取引では、担当者が関心を持った内容を社内で共有し、確認を経て判断に至る進行が一般的です。この過程で必要になるのは、口頭の説明ではなく、後から読んでも判断できる資料です。製品の特徴、想定する購入者、価格と供給の条件、販促の計画、表示や広告表現が法令に沿っていることの説明などが求められます。担当者が社内で説明する立場に立つ以上、その説明を支える材料を渡せるかどうかが進行の速さを決めます。PR側では、発表資料とは別に、取引先の社内検討で使える形の説明資料を準備しておくと有効です。加えて、質問への回答を記録として残し、窓口を明確にしておくと確認のやり取りが短くなります。この地道な準備は、話題づくりに比べて評価されにくい部分ですが、日本市場での立ち上がりの速さに直結します。
メディアへの情報提供では、それぞれの制作サイクルを踏まえた時期の設計が必要です。取り上げてもらいたい時期の直前に情報を渡しても、企画の検討が終わっていれば入る余地がありません。逆に早すぎる情報提供は、発売前の内容の取り扱いに配慮が必要になります。公開してよい時期、写真や成分情報の使用範囲、価格や発売日の確定状況などを整理し、どの段階で何を渡すのかを決めておくことが実務の要点です。加えて、発表前の情報を共有する場合の扱いについては、あらかじめ条件を明確にしておくと信頼関係を保てます。海外本社が先に現地で発表してしまい、日本側の準備が整う前に情報が広がるという行き違いも起こりがちです。国をまたぐ発表の順序と時差を含めて調整しておくと、日本市場での告知の効果を損なわずに進められます。
ここまで整理した前提を踏まえると、PRの設計は施策の選択から始めるものではなく、条件の確認から順に降りてくる作業だと分かります。最初に決めるのは上市の時期と販売の名義、次に表示と表現の制約、そして最初に置くチャネルです。ここまでが定まると、伝えるべき内容と伝える順番が絞られ、どの施策が必要かは結果として決まります。設計の目的は、話題の量を最大化することではなく、関心を持った人が確かめて購入し、評価を残すまでの経路を成立させることです。その経路が一本つながっていれば、施策の効果は積み上がります。ここでは設計の順番と、社内および外部パートナーの役割分担を整理します。個別施策の進め方は本記事の範囲を超えるため、必要に応じて実践側の解説を参照してください。
設計の起点は上市の時期です。許認可と届出の進行によって販売を開始できる時期が決まり、そこから流通の商談時期、メディアへの情報提供の時期、発信を立ち上げる時期が順に決まります。この順番を守ると、準備の抜けが見つけやすくなります。たとえば表示ラベルの確定が遅れていれば、対外的に出せる製品情報が固まらないため、発表資料の作成も後ろに動きます。起点チャネルをECに置くなら、商品ページの情報整備とレビューが積み上がる期間を織り込む必要があります。実店舗を狙うなら、棚割りの検討時期に間に合う形で実績を示す材料を用意しておかなければなりません。逆算の順番を決めておけば、限られた期間でどこに人と予算を寄せるべきかも判断しやすくなります。施策ごとの具体的な進め方や事例は、韓国コスメのPR戦略|日本市場で成功する実践方法と成功事例で扱っています。
前提の確認から実行までを一つのチームで担うのは現実的ではありません。許認可と表示は薬事や品質の担当、流通の商談は営業、発信と体験づくりはマーケティングやPRの担当が関わり、韓国本社との調整も並行します。ここで決めておきたいのは、判断の窓口と情報の集約先です。表記の基準や公開可能な情報を一か所で管理し、そこを参照すれば誰でも同じ説明ができる状態にしておくと、関係者が増えても内容がぶれません。外部パートナーに委ねる範囲も同じ考え方で決めます。日本市場の商習慣やメディアとの関係を要する部分は外部の知見を借り、ブランドの意図や製品情報の管理は自社に残す形が扱いやすい分担です。パートナーを検討する段階の進め方は、韓国コスメのPR会社の選び方|要件定義から比較軸・費用まで解説で整理しています。
ここでは、日本市場でPRの準備を始める段階で寄せられることの多い疑問を整理します。いずれも前提条件に関わる内容で、着手前に確認しておくと後の手戻りを減らせます。
Q. 韓国コスメを日本で販売するには何の許可が必要ですか。
A. 自社で輸入して国内に出荷する場合は、化粧品製造販売業許可と、包装・表示・保管を行う区分の化粧品製造業許可が必要です。あわせて外国の製造販売業者や製造業者に関する届出と製造販売届書の提出が求められ、総括製造販売責任者の設置も条件になります。国内の輸入販売会社に販売名義を委ねる形も選択できます。
Q. 薬機法では化粧品の効果をどこまで表現できますか。
A. 厚生労働省が示す化粧品の効能効果56項目の範囲に収まる表現のみ使えます。皮膚にうるおいを与える、皮膚をすこやかに保つといった穏やかに整えることを示す表現が該当し、肌の生まれ変わりを促すなど体の働きを変える言い方は範囲を超えます。試験データがあっても範囲の外に出れば誇大広告として扱われます。
Q. インフルエンサーに製品を提供する場合もステルスマーケティング規制の対象になりますか。
A. 対価の支払いや製品の提供を通じて事業者が投稿内容に関与している場合、広告であることが分かる表示が必要です。2023年10月に施行された規制では、表示の義務を負うのは発信した個人ではなく広告主である事業者側とされています。依頼の条件と表記のルールを文書で共有しておくことが実務上の要点です。
Q. 日本市場では最初にどのチャネルから始めるべきですか。
A. 一律の正解はなく、製品カテゴリと在庫体制によって変わります。韓国コスメは購入経路の中でECの比重が大きく、少ない初期在庫で反応を確かめやすい特性があります。実店舗は棚割りの検討時期が決まっているため、ECなどで実績と評価を積んでから商談に臨む流れが現実的です。
韓国コスメが日本市場で評価を得るためには、施策の巧拙より前に、前提条件をどれだけ正確に把握しているかが問われます。韓国市場との競争環境の違い、成分と使用実感を確かめてから購入する生活者の評価軸、薬機法と景品表示法とステルスマーケティング規制が重なる表現の制約、許認可と表示のルール、業態ごとに前提が異なるチャネル構造、そして稟議と編集サイクルが決める時間軸。これらを先に並べておくと、選ぶべき施策とその順番は自然に絞られていきます。
株式会社PA Communicationは、美容やファッション分野の広報を専門とし、メディアやインフルエンサーとのネットワークを活かした支援を行っています。韓国ブランドの日本展開についても、前提条件の整理から発表の設計、流通に向けた材料づくりまで、日本市場の商習慣に沿った形でご提案します。日本市場での立ち上げやPR体制の見直しを検討されている場合は、お気軽にご相談ください。
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